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長編紹介の第3回目です。
今回は黒沢清監督の『アカルイミライ』です。
黒沢清監督は世界では「第2のクロサワ」「ふたりのクロサワ」としてすっかり知られるようになり、現在は北野武監督とともに東京芸術大学の教授も務めています。
ちなみに今回の『アカルイミライ』は2003年カンヌ国際映画祭正式出品作品であり、同年の日本プロフェッショナル大賞で作品賞・監督賞・主演男優賞をトリプル受賞しています。
あらすじはこんな感じ。 「眠ると未来の夢を見るという仁村雄二は、いつも何かにイラついていた。
心を許せる唯一の存在である同僚の有田守は、ある日「嵐が来るかもな」と言い残し、突然姿を消す。
そんな雄二の前に、守の父、真一郎が現れ、雄二はいつしか彼のもとで働き始める。
世代も考え方も違う二人だったが、次第に守の残したクラゲを東京の河川で繁殖させるということに熱中していくのだった・・・。」
『アカルイミライ』は映画的比喩に満ちた作品だと思います。暗示的、象徴的な描写が多く、「行間」がものすごく多い映画だと感じました。
「この映画って何が言いたいんだろう?」
と思った経験がみなさんにもあると思いますが、僕も数年前に初めてこの映画を観た時はそう思いました。
しばらくの後に、前東京大学総長であり、カリスマ映画批評家の蓮實重彦さんの論文を読んでいてなんとか腑に落ちた次第です。
そんなこんなで今回の作品紹介はかなり蓮實色に染まっています。笑
勘弁してください。笑
黒沢清監督は、2000年に『回路』という作品を撮りました。 そしてこの『回路』で20世紀に別れをつげた黒沢監督は『アカルイミライ』を持ってして21世紀に突入したんです。
1人、また1人と姿を消し、日本の首都からすっかり人影が絶えてしまった前作『回路』のラストシーン。『Cure』(97)でもそうであったように危険な存在と素肌で接しあったわけでもないのに何かが伝染し、人々は思考と行動の自由を奪われてしまう。しかも感染の過程は目に見えないので、何かが起こりつつあるという気配ばかりが画面を鈍く震わせる。
つまりは「非接触」の恐怖を20世紀の黒沢清監督は描いていました。
そして『アカルイミライ』の最も象徴的なものに「毒クラゲ」が登場してきます。
つまりは言うまでもなく「非接触」の象徴だと言えます。
「あれ、21世紀になってもまた非接触か?」と思わせておきながら、しかし今回は違うんです。違ったんです。
この『アカルイミライ』では、「接触」してしまうんです。
映画の描写の中に、何かと何かが触れ合う瞬間を確実に見てとれるはずです。
これ以上は、具体的には言いません。
気になったら【CLARK THEATER】で観てください。笑
「非接触」を描き続けた監督だからこそ表現できるような種類の「接触」が確かに画面の中に存在するんです。
黒沢清監督はこの映画で21世紀に入り、新たなメッセージを世界に発信したんです。
クラゲの他にも、「リサイクル」「殺人」「団塊の世代」「チェ・ゲバラ」「夢」…などなど、象徴的・暗示的な描写が数多く登場します。
まさしく映画的比喩に満ちています。
僕らの女リーダー(笑)は「映像を読むこと」の大切さ、尊さを日々訴えていますが、この映画はまさに「映像を読む」ことを観客に求めている言えるのではないでしょうか?
今をときめくオダギリジョー、そして浅野忠信、藤竜也、加瀬亮、松山ケンイチ、りょう…など、超豪華な出演陣の演技にも注目です。
そして映画界のカリスマスタイリストである北村道子さんが手がける衣装も最高にクールです。COOLです。
THE BACK HORN の主題歌もいいですよ。
この映画の特徴の1つにタイトルテロップが映画のラストに登場することが挙げられます。
そんなラストの“あのシーン”にあなたはどのような「ミライ」を見るでしょうか?
「明るい未来」でも「あかるいみらい」でもなく『アカルイミライ』なんです。
そんな極めて記号的な響きの中に込められた黒沢清監督の考えとは…?
21世紀。 「アカルイミライ」を「明るい未来」に変え得るのは、観客一人一人だということでしょうか?
(めちゃくちゃベタなオチにしてみました。笑)
そんな問題作『アカルイミライ』。
必見です。
上映スケジュールは以下の通り。
・10月26日 19:00~20:55
・10月27日 11:40~13:35
次回はノルウェー発のドキュメンタリー映画『歌え!フィッシャーマン』です。
熱い映画です。 PR |
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